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生活習慣病と成人病

成人病

「がん」、「心臓病」、「脳卒中」…こわい病気、かつて「成人病」と呼ばれた病気の代表としてみなさんよくご存知だと思います。

現在では「糖尿病」、「高血圧症」、「動脈硬化」などとあわせ、中年や高齢者といった年配の方だけでなく30歳代ぐらいの若い世代にもよく見られるようになってきたことを受け、「生活習慣病」と呼ばれています。

こうした生活習慣病には、食事、喫煙、飲酒、運動、休養などが深く関係しています。病気によっては自覚症状がないまま徐々に進行しているものもあります。

 

生活習慣病

食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣が深く関与し、発症の原因となる疾患の総称です。

以前は「成人病」と呼ばれていましたが、成人であっても生活習慣の改善により予防可能で、成人でなくても発症可能性があることから、1996年に当時の厚生省が「生活習慣病」と改称することを提唱しました。

日本人の三大死因Docomo_kao19であるがん・脳血管疾患・心疾患、更に脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であるとされています。

19世紀まで人類の健康上の課題は感染症の克服でしたが、この課題がほぼ解決した先進諸国では20世紀以降に疾病構造が大きく様変わりして、生活習慣病が主たる死亡原因となっています。

2000年には厚生労働省により、生活習慣病の一次予防に重点を置いた「健康日本21」が策定され、9分野(食生活・栄養/身体活動・運動/休養・心の健康づくり/喫煙/飲酒/歯の健康/糖尿病/循環器病/がん)について数値目標を定め、国民健康づくり運動が推進されることになりました。

2008年には新たに内臓脂肪蓄積を基盤とした複合リスク病態であるメタボリックシンドロームおよびその予備群を2015年までに25%減少する目標が追加され、より強力な生活習慣病撲滅対策として特定健診・特定保健指導が進められています。

 

健診を受けましょう。必要ならば薬を飲みましょう。

  • 投稿日:2018.2.22

ピロリ菌と胃がん

ピロリ菌には多くの場合、子供の頃に感染すると言われています。

ピロリ菌に感染すると、胃に炎症を起こすことが確認されていますが、ほとんどの人は自覚症状はありません。

ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると炎症が起こります。感染が長く続くと、胃粘膜の感染部位は広がっていき、最終的には胃粘膜全体に広がり慢性胃炎となります。この慢性胃炎をヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と呼びます。

ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎が胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎を引き起こし、その一部が胃がんに進行していきます。

ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、除菌が成功すると改善します。*1

*1:除菌療法を受ける方は必ず内視鏡検査を受けてください。

「慢性胃炎」が長期間続くと、胃の粘膜の胃液や胃酸などを分泌する組織が減少し、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進み「萎縮性胃炎」という状態になります。「萎縮性胃炎」になると、胃液が十分に分泌されないため、食べ物が消化されにくく、食欲不振や、胃もたれの症状があらわれることがあります。

萎縮がさらに進むと胃の粘膜は腸の粘膜のようになる「腸上皮化生」(ちょうじょうひかせい)という現象が起こることがあります。その仕組みはまだ明らかになっていませんが、腸上皮化生を起こした患者さんの一部には、胃がんになる人がいることが報告されています。

 

内視鏡でみると、人の胃は十人十色です。みずみずしい若い胃の方もいれば、非常に年をとった胃の方もいます。ピロリ菌に感染していない方は70歳であっても、20歳のままの胃粘膜であるのに対して、ピロリ菌に感染している方は、胃粘膜の老化現象がみられます。ピロリ菌感染者は、持続的な胃炎のため老化をきたしています。内視鏡検査で、ご自分の胃が若いかどうかをチェックしてみるのもいいかもしれません。

胃がんとピロリ菌は密接に関係しているといわれています。

1994年にWHO(世界保健機関)は、ピロリ菌を「確実な発がん因子」と認定しました。これは、タバコやアスベストと同じ分類に入ります。

ピロリ菌の感染が長期間にわたって持続すると、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進行し、一部は腸上皮化生となり、胃がんを引き起こしやすい状態をつくりだします。

また、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎などの患者さんを対象としたわが國の調査では、10年間で胃がんになった人の割合は、ピロリ菌に感染していない人では0%(280人中0人)、ピロリ菌に感染している人では2.9%(1246人中36人)であったと報告されています。

※現在、保険適用でピロリ菌の検査・除菌療法を行うことができる疾患は決められています。

ピロリ菌を除菌すると、新しい胃がんが発生する確率を減らすことができる可能性があります。早期胃がんの治療後にピロリ菌を除菌した患者さんは、除菌をしなかった患者さんと比べ、3年以内に新しい胃がんが発生した人が約3分の1だったと報告されています。

WHO(世界保健機関)の国際がん研究機関は、ピロリ菌除菌に胃がん予防効果があることを認め、各国ごとにその戦略をたてるようすすめています。

一般にがんを予防するためには食事、環境および生活習慣に留意することが必要とされています。

それをわかりやすく解説したものとして財団法人がん研究振興財団より「がんを防ぐための新12か条」が2011年に提案されました。これは、1978年にまとめられた「がん予防の12箇条」を、日本人を対象とした疫学調査や、科学的に妥当な研究方法で明らかにされた証拠をもとに検証し、新たに提案されたものです。

この新12か条で胃がんについては、九「ウイルスや細菌の感染予防と治療」として胃がんの発生の重要な因子の一つと考えられているピロリ菌についての記載が加わっており、ピロリ菌に感染していれば除菌療法を含めて、主治医へ相談することが勧められています。

胃がんと食事についてはとくに、五「塩辛い食品は控えめに」六「野菜や果物は豊富に」が参考になると思われます。

塩辛い食品は控えめに

久山町研究注)では、ピロリ菌感染者で、萎縮性胃炎を有している人について検討したところ、食塩を多く摂取している人ほど胃がんの発生が多かったと報告されています。

まずは、ピロリ菌を除菌し、食事は野菜や果物をとり、塩分を控えることで、生活習慣病や胃がんの予防対策を行いましょう。

注)1961年から福岡市に隣接した糟屋郡久山町(人口約8,400人)の住民を対象として行われている疫学調査

野菜や果物は豊富に

野菜や果物には、カロチノイドやビタミンCなどの発がんを抑制するといわれる成分が豊富に含まれています。WHO(世界保健機関)は「野菜・果物をほぼ確実に胃がんのリスクを軽減するもの」としていますので、野菜・果物は少なくとも毎日1回は食べたほうがよいと考えられます。

胃液中のビタミンCは、ピロリ菌の感染者では減少していますが、除菌に成功すると通常の値に復帰することが報告されています。つまり、ピロリ菌による慢性胃炎があると、胃がん発生を予防する働きのあるビタミンCが胃液中に分泌されにくくなり、胃がん発生の可能性が増すことになります。野菜・果物を多くとっても、ピロリ菌に感染していては、十分な胃がん予防効果が発揮できないともいえます。

  • 投稿日:2018.2.10

水いぼ

水いぼってどんな病気?水いぼってどうやって感染するの?

水いぼは伝染性軟属腫ウイルスが皮膚の小さな傷や毛穴から入り込み、皮膚の細胞に感染します。

その細胞の中でウイルスが増えた結果、いぼとなって皮膚に出現します。

潜伏期間は2週間から数か月といわれています。

水いぼがつぶれ、そこにいるウイルスが自分や他人の皮膚の傷や毛穴に接触することでそこの皮膚の細胞に感染します。

皮膚の接触、タオルの共用などで感染することが多いと報告されています。

 

どんな症状なの?

皮膚と同様の色の1~5mm程度の隆起が多数出現します。

感染の初期は小さく、徐々に大きくなりますが、1cmを超えることはほぼありません。

水が入っているような光沢のある柔らかいいぼで、痛みやかゆみはありません。

いぼが大きくなると、中心部がへこんできます。

これも一つの特徴です。

 

ぶつけたり、引っかいたりすると水疱が壊れて、炎症が起きその後消えます。

時々、その炎症が化膿したりすることもあります。

消えていく速度よりも、発疹が次々と自分の皮膚に拡大していく速度のほうが早く、一定期間その数は増え続けます。

しかし、数か月すると、その拡大は止まり、自然と消えていきます。

体の中の免疫反応に起因し、消失していくとされていますが、詳細な免疫反応は明らかになっていません。

 

水いぼの治療法、水いぼってとった方がいいの?

水いぼは1年以内にほぼ自然治癒します。

そのため、自然治癒を待つか、積極的な治療を行うかは議論が残っています。

外科的にピンセットを使ってつまんでとったり、液体窒素でいぼを凍結させたりする方法は、痛みも伴いますし、皮膚を傷つけるため、二次性の皮膚の感染(とびひなど)のリスクもあります。

お子さんのことを考えると、自然に治癒することを待つことが一番いい方法であると考えられます。

アシクロビルやシメチジン、ヨクイニンなどの内服薬も処方されていることがありますが、これらの内服薬も効果があるというはっきりとした証拠はなく、飲ませる必要はないと考えられます。

保育園やプールでの感染拡大を恐れ、プールへの参加、保育園への通園可否について相談を受けることがありますが、特に法的な規制はありません。

学校保健安全法では、予防方法および学校における対応として、「多数の発疹があるものについては、水泳、プールでのビート板や浮き輪の共用をしない」と表記されていて、プールへの参加そのものに規制はされていません。

プールの水を介して感染しませんが、遊具やバススポンジ、タオルなどの共有は避けるようにした方がよいでしょう。

また、皮膚の状態が悪く、スキンバリア機能が低下している場合、特にアトピー性皮膚炎や湿疹がある場合には、感染のリスクが高くなるため注意が必要です。

  • 投稿日:2018.2.08

腸内細菌?

腸内細菌(ちょうないさいきん)とは、ヒト動物の内部に生息している細菌のこと。ヒトでは約3万種類[1]、100兆[2]-1000兆[1]個が生息し、1.5kg-2kgの重量になる[1]。

ヒトの場合、腸内細菌には主に5つの働きがある[1]。

母乳栄養による乳児の死亡率の低下

死亡した乳児(新生児を除く)を対象として調査した結果(1957年東京都)によれば、母乳栄養、混合栄養、人工栄養の各栄養法による死亡率比は、成熟児については、ほぼ1:2:3、未熟児については、ほぼ1:2:4の値を示していた[16]。 特にビフィズス菌は母乳栄養の便に多く存在する。正常な母乳栄養児のフローラはビフィズス菌が極めて優勢である。腸内のビフィズス菌を旺盛にするために母乳に多く含まれる乳糖オリゴ糖などが有効である[16]。ビフィズス菌は乳糖やオリゴ糖などを分解して乳酸酢酸を産生して腸内のpHを顕著に低下させ[17]、善玉菌として腸内の環境を整えるほか、花粉症などアレルギー症状の緩和にも貢献していることが分かってきた[18]。乳幼児に多いロタウイルスによる感染性腸炎の抑制をする可能性が報告されている[19]。ラクトフェリンは、母乳唾液などの外分泌液中に含まれる鉄結合性の糖タンパク質である。ラクトフェリンは、強力な抗菌活性を持つことが知られている。グラム陽性グラム陰性に関係なく多くの細菌は、生育にが必要である。トランスフェリンと同様、ラクトフェリンは鉄を奪い去ることで、細菌の増殖を抑制する[20][21]。母乳の中でも、とりわけ出産後数日間に分泌される初乳にはラクトフェリンが多く含まれている。授乳により免疫グロブリンラクトペルオキシダーゼなどと共に、母体からラクトフェリンが新生児に取り込まれる。ラクトフェリンはこれらの因子と共同で、免疫系が未熟な新生児を外敵から防御していると考えられる。乳酸菌ビフィズス菌などの腸内細菌は、生育の鉄要求性が低く、ラクトフェリンは抗菌活性を示さないあるいは、むしろ増殖を促進する[20][21]。

短鎖脂肪酸の合成

消化管んは自力ではデンプングリコーゲン以外の食物繊維である多くの多糖類を消化できないが、大腸内の腸内細菌が嫌気発酵することによって、一部が酢酸酪酸プロピオン酸のような短鎖脂肪酸に変換されてエネルギー源として吸収される。健常者ではこれらの3種類が短鎖脂肪酸の97%を占め、潰瘍性大腸炎罹患者では罹患部位が広がるごとに短鎖脂肪酸のうち乳酸が占める割合が大きくなってくる。健常者の場合、大腸内で乳酸が生成されると腸内細菌により速やかに酢酸、酪酸、プロピオン酸、炭酸ガス水素メタンなどに代謝される[22]。食物繊維の多くがセルロースであり、人間のセルロース利用能力は意外に高く、粉末にしたセルロースであれば腸内細菌を介してほぼ100%分解利用されるとも言われている。デンプンは約4kcal/g のエネルギーを産生するが、食物繊維は腸内細菌による醗酵分解によってエネルギーを産生し、その値は一定でないが、有効エネルギーは0~2kcal/gであると考えられている。また、食物繊維の望ましい摂取量は、成人男性で19g/日以上、成人女性で17g/日以上である[23]。食物繊維は、大腸内で腸内細菌によりヒトが吸収できる分解物に転換されることから、食後長時間を経てから体内にエネルギーとして吸収される特徴を持ち、エネルギー吸収の平準化に寄与している。

小腸では栄養素を吸収しても、小腸組織の代謝には流用されずに即座に門脈によって運び去られ、小腸自体の組織は動脈血によって供給される栄養素によって養われる。しかし、大腸の組織の代謝にはこの発酵で生成されて吸収された短鎖脂肪酸が主要なエネルギー源として直接利用され、さらに余剰部分が全身の組織のエネルギー源として利用される。

ウマなどの草食動物ではこの大腸で生成された短鎖脂肪酸が主要なエネルギー源になっているが、ヒトでも低カロリーで食物繊維の豊富な食生活を送っている場合にはこの大腸での発酵で生成された短鎖脂肪酸が重要なエネルギー源となっている。

ヒトの結腸、特に結腸後半の粘膜は、酪酸を産生する腸内細菌が作る酪酸を主たるエネルギー源として利用している[22]。酪酸は、大腸の栄養エネルギーの70-90%を占めている[24]

酪酸を生成する代表的な酪酸菌であるクロストリジウム・ブチリカムは、偏性嫌気性芽胞形成グラム陽性桿菌である。クロストリジウム属タイプ種でもある。芽胞の形で環境中に広く存在しているが、特に動物の消化管内常在菌として知られている。日本では宮入菌と呼ばれる株が酪酸菌の有用菌株として著名であり、芽胞を製剤化して整腸剤として用いられている[25]。クロストリジウム属の一部の菌は酪酸菌として知られ、漬物の酪酸臭の原因となる[26]。

腸内細菌が産生した酪酸が、ヒストンのアセチル化を促進し、p21遺伝子を刺激し、細胞サイクルをG1期で留めるタンパク質であるp21が大腸がんG1期に留め置き大腸がんを抑制することが指摘されている[27][28]。酪酸生成能が高いButyrivibrio fibrisolvensをマウスに投与したところ、酪酸生成量が増加し、発癌物質で誘発した大腸前癌病変の形成が抑制され、大腸がんを予防、抑制する可能性が指摘されている[29]。大腸癌患者の糞便を健常者のものと比較すると有機酸濃度が低く、特にn-酪酸の濃度がとりわけ低値であったことが報告されている[30]。

ビタミンの合成

編集ビタミンKは食物からの摂取と並んで、幾つかの種類に属する複数腸内細菌によっても供給される。ビタミンKは血液凝固作用(止血)にも関係し、これが不足すると各種内出血といった欠乏症が発生する。ヒト成人に於いては通常、腸内細菌による供給だけでも充分必要量を賄えるが、生まれたばかりのヒト新生児では、まだ充分に腸内細菌叢が形成されて居ないため、これを充分に生産出来ない事から、腸内出血(血便)などの異常が発生しやすい。これに加え、胎児や新生児では出産に際してを柔らかくするためP450により骨のカルシウム定着にも関係しているビタミンKを体内で分解しているとの説もある[31]。また成人でも抗生物質の投与により腸内細菌叢が損なわれた際には、同様に欠乏症が発生し得る。

ビオチン(ビタミンB7)の一日の目安量は、成人で45μg。腸内細菌叢により供給されるため、通常の食生活において欠乏症は発生しない[32]。ピリドキシンビタミンB6)も腸内細菌により供給されている[33]。

食物繊維を多く摂ると腸内細菌によるリボフラビンビタミンB2)の合成が盛んになる[34]。

生体内においては、ナイアシン(ビタミンB3)はトリプトファンから生合成される。ヒトの場合は、さらに腸内細菌がトリプトファンからナイアシン合成を行っている。

プロピオン酸生産菌はビタミンB12を生産する主要な菌である[35][36][信頼性要検証]。ビタミンB12は、特定の真正細菌及び古細菌による原核生物によってのみ天然に産生され、多細胞または単細胞の真核生物によって産生されたものではない[37][38]。ヒトや他の動物のいくつかの腸内細菌によって合成されるが、ビタミンB12が吸収される小腸からさらに遠位の大腸でビタミンB12が産生されているので、ヒトは大腸で作られたビタミンB12を吸収することができないが[39] 、のような反芻動物は細菌を胃で培養し産生されたビタミンB12を腸内で吸収する[39]。

腸内細菌は、パントテン酸(ビタミンB5)、葉酸(ビタミンB9)、リボフラビン、ナイアシン(ビタミンB3)、ビオチン(ビタミンB7)、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンKも生成する[40]。また、酵母は、ビタミンB1を合成することができる[41]。

ビフィズス菌は、ビタミンB1ビタミンB2ビタミンK、その他ビタミンB群を生成する[16]。ビフィズス菌(B. infantisB. breveB. bifidumB. longum及びB. adolescentisのすべて)で菌体内にビタミンB1、B2、B6、B12、C、ニコチン酸(B3)、葉酸(B9)及びビオチン(B7)を蓄積し、菌体外にはビタミンB6、B12及び葉酸を産生した。ヒト(成人)の腸内の平均量のビフィズス菌の推定ビタミン産生量はビタミンB2、B6、B12、Cおよび葉酸で所要量の14-38%を占め無視できない割合と考えられる[42]。

乳酸菌ビタミンCを微量ながら生成する。野菜果物を摂れない遊牧民は、乳酸発酵された馬乳酒を1日最低1-3リットル程度飲んでいる[43][44]。馬乳酒にはビタミンCが100mlあたり8-11mg含まれている[45]。

ヘムの分解物であるビリルビンの代謝

肝臓においてグルクロン酸転移酵素によりヘムの分解物であるビリルビングルクロン酸抱合を受け、水に溶けるようになる。抱合型ビリルビンはほとんどが胆汁の一部となって十二指腸に分泌される。抱合型ビリルビンの一部は大腸に達し、腸内細菌の働きにより還元されてウロビリノーゲンに代謝され、腸から再吸収され、腎臓を経て、尿として排泄される。この循環を腸肝ウロビリノーゲンサイクルと呼ぶ。ウロビリノーゲンは、抗酸化作用を有し、DPPHラジカル除去作用は他の抗酸化物質ビタミンEビリルビン及びβ-カロチン)よりも高い値を示す[46][47]。再吸収されたウロビリノーゲンが体内で酸化されると黄色のウロビリンとなり尿から排泄される。 腸内に残るウロビリノーゲンはさらに還元されてステルコビリノーゲンになり、別の部位が酸化されて最終的にはステルコビリンになる。このステルコビリンは大便の茶色の元である。 なお、ビリルビンが胆汁として分泌されずに体内に蓄積されると黄疸になる。

水素ガスの産生と抗酸化作用

難消化性である食物繊維乳糖の摂取と腸内細菌により呼気やおならへのガスの産生と排出が高まる。産生されるガスは水素とメタンが多いが、メタンは個人差がありメタン産生菌を有していないとメタンは産生されない。おならと呼気の水素量の相関は0.44と高い[48]。

αグルコシダーゼ阻害剤である糖尿病治療薬のアカルボースを服用すると炭水化物の吸収が抑制され大腸の腸内細菌により水素などが発生するが、アカルボースの服用が心血管事故を抑制する可能性があり、この原因として高血糖の抑制に加えて、呼気中に水素ガスの増加が認められ、この増加した水素の抗酸化作用により心血管事故を抑制するメカニズムが想定されている[49]。

水素による抗酸化作用が各種研究で報告されているところであり、また、腸内細菌は水素を産生している。コンカナバリンAを用いて肝炎を誘導したマウスの実験では、抗生物質を使用して腸内細菌による水素発生を抑制させたマウスと比較して、通常の腸内細菌が発生させた水素はマウスの肝臓の炎症を抑制することが認められた[50]。

腸内環境の維持

乳酸菌の腸内細菌は、腸内で担体として増加することにより菌体が腸管老廃物を吸着して排出させている可能性がある[44]。健康なヒトの腸内にはたくさんの種類の微生物が生息しており、ほぼすべての人の腸内からは、ラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属の乳酸菌が検出される。ヒトの糞便中1gあたりの菌数は、ビフィズス菌が100億個、ビフィズス菌以外の乳酸菌が10-100万個であるといわれている[51]。これらの乳酸菌は、俗に言う「腸内の善玉菌」の一種として捉えられる場合が多く、腸内常在細菌叢(腸内フローラ)において、これらの細菌の割合を増やすことが健康増進の役に立つという仮説が立てられている。ただしその有効性については、意義があるとする実験結果と関連が認められないとする結果がそれぞれ複数得られており、結論が出ていないのが現状である。 #善玉菌と悪玉菌を参照のこと。

蜂蜜の中には芽胞を形成し活動を休止したボツリヌス菌が含まれている場合がある。通常は摂取してもそのまま体外に排出されるが、乳児が加熱していない蜂蜜を摂取すると体内で発芽して毒素を出し、中毒症状(乳児ボツリヌス症)を引き起こし、場合により死亡することがあるため、注意を要する。十分に腸内細菌の発達したヒトでは生の蜂蜜を摂食しても、腸内細菌が芽胞からのボツリヌス菌の増殖を妨げる(詳細は蜂蜜を参照のこと。)[52]。

腸内細菌であるいくつかのプロバイオティクス株が過敏性腸症候群や慢性便秘の症状の減少に効果があるとされている。症状の減少をもたらす可能性が最も高い腸内細菌は、以下のようなものが掲げられている。

自閉症予防の可能性

自閉症児と健康児の腸内細菌を比較するとクロストリジウム属の細菌が平均して10倍程度多い状況が報告されている。乳幼児時に多種多量の抗生物質を投与され腸内細菌の組成が破壊され、クロストリジウム属の増殖とともに自閉症に至った例が紹介されている。幼い脳にダメージを与えるクロストリジウム属の神経毒素が原因であると指摘している[56]。

病原性クロストリジウム属菌は、(Shaw 2010)によって、自閉症をもつ小児の尿より本属が作り出す物質3-(3-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸(略称:HPHPA) が高濃度で検出される報告がなされ、カビ毒の向神経作用が注目された[57]。

フィンランドの調査で、腸内フローラが自閉症を予防する効果がある可能性が示唆されている。ウィキペディアより

 

腸内細菌は大腸より小腸に多く存在します。

  • 投稿日:2018.2.06

高血圧って知ってますか?

高血圧の診断基準

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」が新しくなりました。自分の血圧がどのレベルかを知っておきましょう。

成人における血圧値の分類(mmHg

分類

収縮期血圧(最高血圧)  拡張期血圧(最低血圧)     

至適血圧

120 かつ <80

正常血圧

120129 かつ/または 8084

正常高値血圧

130139 かつ/または 8589

I度高血圧

140~159 かつ/または 90~99

II度高血圧

160~179 かつ/または 100~109

III度高血圧

≧180 かつ/または ≧110

(孤立性)収縮期高血圧

140 かつ <90

 

※赤字部分が一般的にいう高血圧 (日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」より)

血圧は低めがいい

自分の血圧が正常値の範囲だと、つい安心しがちです。しかし、実際には、正常高値や正常値のレベルでも、脳卒中や心筋梗塞などを起こす例は少なくありません。病気の発症率との関係をみても、例えば脳卒中の発症率がもっとも低いのは、ガイドラインでいうと至適血圧(収縮期血圧<120かつ拡張期血圧<80)のレベルです。そのため最近は、「血圧はできるだけ低めにコントロールするほうがいい」とされています。

高血圧にも段階がある

新しいガイドラインでは、高血圧をⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分けています。従来は、軽症・中等症・重症としていましたが、軽症というと誤解を与えやすいので、治療を必要とするレベルであることを明確にしたものです。正常高値というのは、「高血圧の一歩手前で、注意が必要なレベル」という意味で、高血圧予備軍の段階です。また、(孤立性)収縮期高血圧とは、収縮期血圧だけが特に高いもので、動脈硬化の進んだ高齢者に多くみられます。

高血圧・基礎の基礎

収縮期血圧と拡張期血圧……心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返し、血液を体内へ送っています。心臓が収縮すると大量の血液が送り出され、血管に大きな圧力がかかります。これが収縮期血圧で、最高血圧ともいわれます。反対に心臓が拡張すると、血液の流れはゆるやかになり、血管にかかる圧力も低下します。これが拡張期血圧で、最低血圧ともいわれます。

  • 投稿日:2018.2.02