古くて新しい肺炎球菌
インフルエンザ
「インフルエンザが長引いて、肺炎になった」ーとはよく聞く話。だが、この場合、両者は別の病原体が原因だ。
肺炎の原因で最も多いのが肺炎球菌という細菌。インフルエンザによる炎症がきっかけで、細菌類から体を守る気道の繊毛が抜け落ち、もともとのどにいた肺炎球菌が肺へ侵入してくるのだ。65歳以上のお年寄りに多い。
肺炎球菌は、落花生のように球を二つくっつけた形をしているので、肺炎双球菌とも呼ばれる。19世紀、フランスのルイ・パスツールが発見した。
この細菌は基礎医学史上でも有名だ。遺伝を担う本体がたんぱく質ではなく、DNAであることが、肺炎球菌を使った実験で突き止められたからだ。肺炎患者の3人に1人が亡くなっていた20世紀初頭のことである。
肺炎球菌による肺炎は、ペニシリンの登場によって克服されたかに見えた。
だが、呼吸器感染症を40年以上もみてきた東京専売病院の
島田馨院長は「昔は薬を飲めば百%治ったけれど、最近の肺炎球菌はそうでもなくなった」と、変化を肌で感じるという。
ペニシリン耐性菌が急速にはびこり出したのが要因だ。最近では全体の2~5割を占めるという調査もある。
ただ、インフルエンザワクチンと併用すると、より肺炎にかかりにくく、また薬剤耐性の肺炎球菌に対する予防効果も高いというデータがあり、肺炎予防のワクチン開発は進んでいる。
肺炎球菌ワクチン接種しましょう。