年1回の健診なぜ大事なのか

私の中学の同級生（55）は、たばこを毎日2箱吸うのに健康に自信を持ち、健康診断を軽視していた。そんな彼の体を心配した奥さまから「医師の立場から毎年健康診断を受けるように説得してほしい」と頼まれた。

彼は「健康診断なんて3年に1回くらいで十分。なぜ毎年受けなけれならないのか。理由を示せと私に強く迫った。そこで、がんの早期発見と関連付けて説明した。

体の中で1個の細胞ががん化する。時間がたつと個のがん細胞が2個になる。それが4個、8個、16個、32個、6個…と続く。細胞が二つに分裂するまでの時間をダブリングタイム（倍加時間）という。ダブリングタイムには幅があるが10日間をかけるのが一つの目安だ。

ミクロの世界の話になるが、がん細胞の大きさを一辺10マイクロメートル(1000分の1mm) の立方体とすると、1cmの大きさのがんができるまでどらいの時間が必要になるか。1cmの大きさのがんは実に約10億個（10億7374万1824個）のがん細胞から成るので30回分裂する計算となる。ダブリングタイムの10日間をかけると、1cmの大きさのがんができるまで300日かかる。「このことから、年に1回受けることは意味がある」と説明した。

納得した彼は2年前と昨年、続けて健康診断を受けた。1年目は何も異常はなかったが、昨年はエックス線検査で肺に1cmの陰が発見された。精密検査の結果肺がんだった。早期だったので、切除して今はビンビンしている。その後、彼はたばこをやめた。

このほか、健康診断で行われる便潜血検査や血液検査で、早期大腸がんや進行したほかのがんが見つかることがあるので、年1回は受けることが大切だ。